絢爛豪華な離れ 詩夢庵

大正9年(1920)宮越家9代当主正治が、イハ夫人33歳の誕生祝と厄除けを兼ねて建立したと伝えられます。大正浪漫あふれる空間は、夫妻が詩歌を詠む舞台として「詩夢庵」と命名されました。棟梁をはじめ、建設に携わった人々の名前は明らかとなっていませんが、天井や壁、縁側や床の間には銘木や高級建材が惜しげもなく投入され、丁寧な仕上げが施されています。

また、建具についても、襖絵は狩野山楽・岩佐又兵衛・狩野常信といった安土桃山から江戸前期に活躍した絵師の作と伝えられるほか、窓は小川三知作のステンドグラス、欄間は能面師後藤良の彫刻で飾られました。調度も贅が凝らされ、正治夫妻の審美眼に適った家具や文房具・茶道具ほか、近世から近代の書画が邸内を彩っていました。

<涼み座敷の間>

 

奥の間、山蘭の間など格式のある座敷に比べ、より趣向性の高い造りになっています。それらの特徴が最も表われているのが、窓を飾るステンドグラスです。障子4枚組に配された花木によって早春・初夏・初秋、余白を初冬に見立てて季節の移ろいを表すとともに、背面の庭木を借景としています。早春の訪れを真珠色で表現したモクレン(あるいはコブシ)を挟んで、左に青・緑・黄色のアジサイ、右に抑えた朱色のケヤキ(あるいはハゼ)が色づきます。

<廊下・円窓の間>

 

山蘭の間に進む入口部に相当します。外光が抑制された薄暗がりの中に、古来多くの物資や人が行き交った「十三潟」の景観をモチーフとしたステンドグラス作品が浮かび上がります。小川三知が得意とする白砂青松の図案が円窓の構図で表されるとともに、裏側にティファニー様式とよばれるガラスを重ねる高度な技法が用いられています。光が透過すると十三潟の水面にさざ波が寄せる三知の孤高の技がうかがわれます。

<風呂場(未公開)>

 

カワヤナギにカワセミ、ショウブ(アヤメ)を配した水処にふさわしい図案のステンドグラスが飾られています。宮越家の池泉庭園には、初夏アヤメが咲き誇り、カワセミも飛来することから、実際に風呂場の窓から見える情景を切りとったとも考えられます。いまにも葉が揺れ出しそうなやわらかな風を感じさせるカワヤナギに、水面を睨む鋭い眼と嘴のカワセミ、鮮やかなコントラストが印象的な小川三知ならではの作品に仕上がっています。

<山蘭の間・奥の間>

 

離れの中で最も格式の高い正席の間および二の間に相当し、障子を開け放つと枯山水庭園および池泉庭園が望まれます。大正15年(1926)安達謙蔵逓信大臣が宿泊した際に、応接間として利用され、床の間には橋本雅邦筆の大作「山中富士図」が掲げられました。奥の間の襖絵「花鳥之図」は狩野山楽、山蘭の間の襖絵「山水図」は岩佐又兵衛、また欄間の彫刻は能面師として著名な後藤良の作品と伝えられています。

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宮越家 離れ/庭園 Miyakoshi House Annex/Garden

青森県中泊町

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宮越家 離れ/庭園 大正浪漫かほるステンドグラス
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