○中泊町地域裨益型再生可能エネルギー共創条例

令和8年3月19日

条例第1号

私たちの郷土・中泊町は、縄文の昔より日本海と中山山脈に抱かれ、その豊かな自然の恵みを受けながら、持続可能な暮らしを営々と受け継いできた。この地に育まれた風力や太陽光などの再生可能エネルギー資源は、地域と切り離すことのできない貴重な財産であり、町民が優先的に享受すべき権利を有するとともに、未来へと引き継ぐべき共有の財産である。

しかし、化石エネルギーへの過度な依存は大量の温室効果ガス排出を招き、地球規模での気候変動を加速させ、異常気象を深刻化させている。本町を含む津軽地域においても、海面水温の上昇に伴う大型台風や豪雪、白神山地のブナ林の消滅危機など、地域社会の存続を揺るがす事態が現実の脅威となっている。今を生きる私たちには、未来を担う世代がこの豊かな自然を受け継げるよう、再生可能エネルギーの導入に際して、地域の資源としてのエネルギーを町民が享受し、その利益が確実に町内へ還元される「地域裨益」の仕組みを構築し、持続可能な地域づくりと脱炭素社会を実現する責務がある。

町民は、地域で生まれたエネルギーの利益を適切に享受する「地域エネルギー享受権」を有するとともに、発電事業者に対し、その事業が地域に裨益をもたらすことを求める「地域裨益権」を持ち、地域経済の好循環と持続的発展を支える主体である。

ここに、町民、町及び事業者が相互の信頼のもとに協働し、地域に根差した再生可能エネルギー事業を共創し、環境保全と調和した豊かな地域社会を築くため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、中泊町における再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)の導入及び利用を通じて、地域外事業者(以下「事業者」という。)からの地域への裨益とエネルギーの享受を実現し、持続可能な地域づくりを推進することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 再エネとは、風力、太陽光、地熱、バイオマス、水力、海洋エネルギー、その他の自然由来のエネルギーをいう。

(2) 地域裨益型再エネ事業とは、再エネの導入又は運用を通じて、町民又は地域社会に経済的、社会的利益を還元する事業をいう。

(3) 地域エネルギー享受権とは、地域で生まれた再エネの利益を町民が適切に享受する権利をいう。

(4) 地域裨益権とは、町民及び町が、地域外事業者に対し、その事業が地域に裨益をもたらすべきことを要求する権利をいう。

(5) 地域外事業者とは、町内及び青森県内に本社を置かない事業者及び資本の過半が町外にある事業者をいう。

(6) 大規模発電設備とは、太陽光発電にあっては出力2000kW以上、風力発電にあっては出力500kW以上の発電設備をいう。

(7) 地域裨益金とは、町内における再エネ事業により得られた売電収入又は利益を基礎として、持続可能な地域づくりと脱炭素社会の実現に資するために事業者が町に拠出する金銭をいう。

(8) 周辺住民とは、発電設備設置場所からおおむね5km以内の住民又は発電設備の設置又は運用により、生活環境、自然環境又は景観への影響を受けるおそれのある住民をいう。

(9) 事業計画段階とは、事業者が再エネ事業の実施を検討し、青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例(令和7年3月青森県条例第2号。以下「県条例」という。)に基づき、申請する内容を町に提示できる段階をいう。

(10) 利害関係者とは、再エネ事業の実施により、経済的、社会的又は環境的影響を受けるおそれのある個人又は団体をいう。

第2章 基本方針及び責務

(基本理念)

第3条 町民、町及び事業者は、相互の信頼と協働により、地域資源を尊重し、環境と調和した地域裨益型の再エネ導入を推進しなければならない。

(町の責務)

第4条 町は、地域エネルギー享受権及び地域裨益権を踏まえ、再エネの利用促進と地域裨益の実効性を確保するために必要な措置を講じる責務を有する。

2 町は、適正な立地を誘導するためのゾーニング、住民参加の促進及び教育・啓発活動を推進する。

(町民の責務)

第5条 町民は、地域エネルギー享受権を踏まえ、再エネの主体的な利用及び地域の事業への参画に努める責務を有する。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、事業活動において生活環境、自然環境への影響に十分配慮するとともに、地域との共生及び地域裨益の具体化に努める責務を有する。

2 事業者は、町民等及び町に対し、事前に十分な情報提供と意見聴取を行わなければならない。

第3章 再エネ事業実施の手続き

(事前説明及び協議)

第7条 事業者は、事業計画段階において県条例に基づいた事業概要を町担当課へ事前説明するとともに、周辺住民及び商工業者等に対し2回以上の周辺住民説明会、全町民に対し1回以上の地域住民説明会を実施し、意見を求めなければならない。

2 町は、町民及び第10条に掲げる協議会等の意見を考慮し、事業者に対し、計画の変更、その他必要な措置について協議するものとする。

(地域裨益型再エネ事業の認定)

第8条 町長は、規則で定める基準に該当する事業を地域裨益型再エネ事業として認定し、公表及びその他必要な支援を行うことができる。

(地域裨益協定の締結)

第9条 事業者は、大規模発電設備(以下「発電設備」という。)を設置しようとする場合、町と地域裨益協定(以下「裨益協定」という。)を締結しなければならない。

2 町が出資している地域エネルギー会社は、町と裨益協定を締結しなければならない。

3 裨益協定の締結にあたっては、次の各号に掲げる事項から複数を選択し、協定書に定めるものとする。

(1) 町内事業者への建設工事や維持管理業務等の優先発注及び町民の優先雇用

(2) 売電収入又は利益に基づく地域裨益金の拠出

(3) 町民への出資機会及び地域金融機関等との連携による金融商品の提供

(4) 町が出資する地域エネルギー会社への電力供給及び電気料金の優遇措置

(5) 災害対策、防災協定、教育・観光資源としての活用による地域貢献

(6) その他町長が地域裨益に資すると認める事項

第4章 再エネ事業の支援及び体制

(協議会の設置)

第10条 町長は、次の各号に掲げる事項について意見及び助言を聴取するため、中泊町再生可能エネルギー共創協議会(以下「協議会」という。)を設置する。

(1) 脱炭素化行動計画に関する事項

(2) 地域裨益事業に関する事項

(3) 再エネ促進区域に関する事項

(4) 地域裨益基金の処分に関する事項

(5) その他町長が必要と認める事項

2 委員は、次の各号に掲げる者のうちから町長が任命する。

(1) 学識経験を有する者

(2) 町議会議員

(3) 町の職員

(4) 農業・漁業団体の代表者

(5) 商工・建設・電気事業を営む者

(6) 町民を代表する者

(7) その他町長が必要と認める者

3 前項に規定する者のほか、協議会にオブザーバーを置くことができる。

4 協議会の会長は、委員の互選により定める。

5 協議会の委員の任期は、1年とする。ただし、再任を妨げない。

6 協議会の事務局は、総合戦略課内に置く。

第5章 監督、事後措置及び雑則

(報告・調査及び改善要求等)

第11条 町長は、この条例の施行に必要な範囲において、事業者に報告を求め、必要があると認めるときは、事業所及び発電設備の設置場所に対して、職員又は町長が指定する者に立ち入り調査をさせることができる。

2 町長は、生活環境又は自然環境に重大な影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、事業者に対し、期限を定めて必要な改善を求めることができる。

3 町長は、前項の規定による改善要求に対し、正当な理由なくこれに従わないときは、当該事業者に対し、必要な措置を講ずることについて勧告することができる。

4 町長は、前項の規定による勧告に従わないときは、事業者の公表、事業の停止、施設の撤去、原状回復及びその他必要な措置を求めることができる。

(委任)

第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、令和8年4月1日から施行する。

中泊町地域裨益型再生可能エネルギー共創条例

令和8年3月19日 条例第1号

(令和8年4月1日施行)